特定調停とは、自分で申し立てをし債務者と債権者との間に裁判所が介入して将来利息のカットや長期分割弁済などの和解を成立させ、支払いを楽にする債務整理方法です。
任意整理と似ていますが違いは、弁護士や司法書士に依頼することなく手続きができるので、費用は抑えられます。
しかし、「特定調停と言われても・・中々よくわからない・・」という方もいるんじゃないでしょうか。
そこで、今回は、特定調停についてメリット・デメリット、費用や手続きなどを徹底研究してみました。
特定調停
特定調停は、債務者と債権者との間に裁判所が介入し、調停委員会(裁判官1人と弁護士資格を持つ調停委員2人)が債務者・債券者双方の意見を調整します。そして解決案を提示する債務整理手続きです。任意整理と同様に、利息制限法に基づく引き直し計算や、将来利息・遅延損害金のカットなどで借金総額を圧縮できます。
特定調停の特徴や仕組み
借金の返済額が減らすことのできる特定調停ですが、それには理由があります。
「利息制限法」と「出資法」
金利の上限を定めている「利息制限法」と「出資法」という2つの法律が関係しています。
利息制限法では金利の上限を15~20%と定めています。利息制限法の上限を超えた金利を定めても、超えた部分の定めは法律上無効となるとされています。
一方、改正貸金業法が完全施行される以前の出資法では、刑事罰の対象となる金利の上限を定めています。出資法は上限金利が29.2%とされており、29.2%を超えた金利を設定している場合には、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこれを併科する」という刑事罰が科せられていました。
つまり、利息制限法の上限金利を超えて設定しても、出資法の上限金利を超えなければ刑事罰は科せられなかったということになります。
このように、利息制限法と出資法の上限金利の間の金利は、民法上は無効にもかかわらず刑事罰は科せられない「グレーゾーン金利」と呼ばれていました。貸金業者は、この「グレーゾーン金利」による違法な金利を取っていたのです。つまり、利息制限法の金利の上限を15%~18%に引きなおす事で、多く支払っていたお金を再計算し返済し過ぎていた金利分を元本に充当させ、法律上返済しなければならない「本当の借金の額」を明らかにします。
特定調停のメリット・デメリット
特定調停にも、メリット、デメリットがあります。ひとつひとつ見ていきましょう。
特定調停のメリット
費用が抑えられる
費用は印紙代・切手代のみなので債権者1社につき500円(収入印紙)です。そして、手続き費用として、裁判所から申立人への書類送付などに使う切手(予納郵便切手)が、債権者1社につき420円分なので1社につき1000円程度で申し立てできます
利息のカットができる
利息制限法の引き直し計算による減額後の債務を、原則将来利息をカットし、3~5年程度の分割での返済となります。
整理したくない債権者は除外することもできる
たとえば、保証人が付いている借金があったとします。他の債務整理方法では、全ての債権者を対象としなければならないため、保証人に請求が行ってしまいますが、任意整理の場合、債権者を一部除外できるため、一部の債権者だけ整理するというようなことも可能です。
特定調停のデメリット
取立行為が止まるまで時間がかかる場合がある
任意整理の場合、弁護士や司法書士が、債権者に通知をしてくれますので、比較的早く督促は止まります。しかし特定調停の場合、申し立てると債権者からの取立行為は原則として止まりますが、申立を行うには各種の書類等を作成・準備する必要があります。これらの手続に時間がかかると、それだけ債権者からの督促が止まるまで時間がかかることになります。
過払い金の返還を受けられない可能性がある
特定調停は、あくまでも現在の借金を利息制限法の上限金利(15~20%)に引き直して減額された借金をどのくらいの期間で支払っていくのか、という合意をする制度にすぎず、過払い金を回収する制度ではありません。したがって、一部の債権者に過払い金が発生していた場合は、別途過払い金返還請求訴訟を裁判所に提起する必要があります。
差押え等が容易になってしまう
特定調停が成立すると調停調書が作成されますが、債権者はこの調停調書により強制執行ができます。このため、調停調書どおりに返済ができなくなった場合には、直ちに給料の差押えなどの強制執行がされてしまう危険性があります。
特定調停の流れ
任意整理は、自分で裁判所に申し立てし、借金を減額できる方法です。期間はトータルで3ヶ月程度かかります。
①特定調停の相談
特定調停を利用する場合,まずは申立てを予定している簡易裁判所の窓口に行き、特定調停の手続きの相談を行います。その際に申立書の書式や申立てのために必要となる書類,費用なども教えてもらえます。
②特定調停申立書の作成
特定調停を利用するためには、申立書を簡易裁判所に提出する必要があります。申立書の書式は、申立てをする簡易裁判所に用意されている場合が多いと思いますので、それに従って作成します。
③特定調停の申立て
特定調停は、原則として簡易裁判所に申立書を提出して申立てをすることになります。申立書は、裁判所用(正本)、債権者用(副本)を提出します。
手数料(収入印紙)や郵券(郵便切手)も一緒に提出する必要があります。収入印紙代は,債務の金額によって異なってきます。郵便切手は裁判所によって異なります。あらかじめ確認しておいた方がよいでしょう。
申立てをする簡易裁判所等は、相手方債権者の本店・営業所所在地を管轄する簡易裁判所になります。
④債権者への通知
申立て後は、裁判所から各債権者に、特定調停が開始されたことの通知がなされます。この通知がなされると、任意整理において弁護士が受任通知を送付した場合と同じように、貸金業者や債権回収会社などからの直接の取り立ては停止します
⑤第1回調停期日
第1回の調停期日では、債務者の方だけが呼び出されるのが通常です。そして,調停委員と債務の状況や返済計画などについて話し合うことになります。
⑥第2回調停期日
第2回以降の調停期日には、債権者も呼び出されることになります。そして、債権者も交えて話し合いをしていくことになります。
実際に対面して話し合いをするわけではなく、交互に調停委員が一方から話を聞き、その間、他方は別室で待機しています。一方から聞いた話を、調停委員が相手方に伝えるという方式です。
調停調書の作成・17条決定
話し合いがまとまった場合には、裁判所の方で、話し合いの結果をまとめた調停調書を作成してくれます。以降は、この調書に記載された内容に従って返済をしていくことになります。
仮に話し合いがつかなかった場合でも、それまでの話し合いに基づいて、裁判所が妥当と考える返済条件で決定をしてくれる場合があります。
任意整理の費用は?
費用は印紙代・切手代のみなので債権者1社につき500円(収入印紙)です。そして、手続き費用として、裁判所から申立人への書類送付などに使う切手(予納郵便切手)が、債権者1社につき420円分なので1社につき1000円程度です。
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